「御名が聖なるものとされますように」

詩篇 86篇
ダビデの祈り。
1. 主よ　耳を傾けて　私に答えてください。

私は苦しみ　貧しいのです。

2. 私のたましいをお守りください。

私は神を恐れる者です。

あなたのしもべをお救いください。

あなたは私の神。

私はあなたに信頼します。

3. 主よ　私をあわれんでください。

絶えず　私はあなたを呼んでいます。

4. このしもべのたましいを喜ばせてください。

主よ　私のたましいはあなたを仰ぎ求めています。

5. 主よ　まことにあなたは　

いつくしみ深く　赦しに富み

あなたを呼び求める者すべてに

恵み豊かであられます。

6. 主よ　私の祈りに耳を傾け

私の願いの声を心に留めてください。

7. 苦難の日に　私はあなたを呼び求めます。

あなたが私に答えてくださるからです。

8. 主よ　神々のうちであなたに並ぶ者はなく

あなたのみわざに比べられるものはありません。

9. 主よ　あなたが造られたすべての国々は

あなたの御前に来て　伏し拝み

あなたの御名をあがめます。

10. まことに　あなたは大いなる方

奇しいみわざを行われる方。

あなただけが神です。

11. 主よ　あなたの道を私に教えてください。

私はあなたの真理のうちを歩みます。

私の心を一つにしてください。

御名を恐れるように。

12. わが神　主よ　私は心を尽くしてあなたに感謝し

とこしえまでも　あなたの御名をあがめます。

13. あなたの恵みは私の上に大きく

あなたが私のたましいを

よみの深みから救い出してくださるからです。

14. 神よ　高ぶる者どもは私に向かい立ち

横暴な者の群れが私のいのちを求めます。

彼らは　あなたを前にしていません。

15. しかし主よ

あなたはあわれみ深く　情け深い神。

怒るのに遅く

恵みとまことに富んでおられます。

16. 御顔を私に向け　私をあわれんでください。

あなたのしもべに御力を与え

あなたのはしための子をお救いください。

17. 私に　いつくしみのしるしを行ってください。

そうすれば　私を憎む者どもは見て　恥を受けます。

主よ　あなたが

私を助け　慰めてくださるからです。

礼拝メッセージ

主の祈りシリーズ ③

2025年1月19日

詩篇 86篇

「御名が聖なるものとされますように」

昨年秋、十戒についての礼拝メッセージ（「御名をみだりに口にしてはならない」について）でも、同じ話をしましたので、覚えておられる方もおられると思いますが、私はある年の冬、「ある赤い缶の名前」が出て来ず、頭が真っ白になりました。

以前いた長野の教会は駐車場が広かったので、除雪機を持っていました。雪が多かった年、除雪機を動かすためのガソリンが無くなってしまいました。そこで10リットルガソリンを入れることのできる赤色の缶を自動車に積んで、セルフ式のガソリンスタンドに行きました。自動車への給油は一般人である私たちにも可能ですが、持ち運べる入れ物への給油は、スタンドの従業員が行うようにと消防法で定められているそうです。ガソリンを使って、悲惨な放火殺人事件が起きてしまった…。その反省から、ちゃんと免許証などで身元確認をして、使用目的を確認した上で、専門スタッフがこういった入れ物に給油しなければならないと、消防法が改正されたそうです。

給油所の前に立って、私は辺りを見回しましたが、従業員の姿が見当たりません。そこで目の前にある「従業員呼び出しボタン」を押しました。家の玄関にあるドアホンのような、中にいる店員さんと会話できる機械でした。「いらっしゃいませ。どうなさいましたか？」と、向こうから声が聞こえた時、私の頭の中は真っ白になりました。「何を話したらいいんだろう？　この缶の名前って、何だっけ？　ああ、どうしよう…」とあせりました。缶を手に沈黙し、立ち尽くしている私の姿を防犯カメラで見てくださったのでしょうね。向こうから「“携行缶”ですね。入れに行きます」と言ってもらいました。「ああそうだった。“携行缶”という名前だったよね」1年ぶりに使う名前を再発見した瞬間であり、名前をちゃんと覚えておくことの大事さを再確認した時でもありました。

さて今日は「主の祈り」の第一の願い「御名が聖なるものとされますように。」（マタイ6：9、ルカ11：2）をともに見つめ直していきましょう。これまでの文語体では、「ねがわくは御名をあがめさせたまえ。」でした。もともとの言語では、「あなたの名が聖とされますように（聖別されますように）。」という祈りです。「天にいます私たちの父よ」と神様に呼びかけ、この特別なお方の聖さが表され、ほめたたえられますようにと、祈るのです。

「御名(みな)・お名前」これはただの文字のられつや記号ではありません。「名は体を表す」とことわざにあるように、そのものを指し示す言葉です。御名は神様ご自身を表しています。また名前は、その人やそのものがもっている特徴・性質をよく表しています。先ほどの「携行缶」もそうですよね。ガソリンを携えて、持って行くことが出来る缶なのです。

私たちの父なる神様は、あまりにも大きく偉大であられ、広く深く豊かなお方であり、また聖くあられるので、人間には到底、理解し尽くせないお方です。でもその神様の方から、私たちに対して「わたしはこういう者なんだよ」と、ご自身を開示してくださるのです。造られた自然界を通して、また支配されている歴史を通して、さらに私たちが経験する日々の出来事を通して、神様はご自身の存在とご性質とお働きを表してくださっています。特に聖書のみことばを通して、そこに記されたご自身の御名を通して、ご自身のことを伝えてくださっています。

今日与えられたみことば、「ダビデの祈り」である詩篇86篇には、どのような神様のご性質また御名が語られているでしょうか？

① 主なる神であり、私たちの訴えを聞いてくださるお方です。

1節　　主よ　耳を傾けて　私に答えてください。　　　  私は苦しみ　貧しいのです。

② 私を守り、救ってくださる神であり、「あなたは私の神」と呼べるほど個人的な関係を築いてくださるお方です。本当に信頼できるお方です。

2節　私のたましいをお守りください。私は神を恐れる者です。　　 あなたのしもべをお救いください。あなたは私の神。　　 私はあなたに信頼します。　

③ さらに

5節には、主よ　まことにあなたは　いつくしみ深く　赦しに富み                あなたを呼び求める者すべてに　恵み豊かであられます。

15節にも、しかし主よ　あなたはあわれみ深く　情け深い神。　　　　    怒るのに遅く　恵みとまことに富んでおられます。

④ 創造主また支配者なる神様です。

9節　主よ　あなたが造られたすべての国々は

⑤ まがいものなどではなく、本物の神であられ、完全に正しいお方です。うそ偽りのない真実なお方です。だからこそ、私たちが歩むべき正しい道を知っておられます。

　11節　主よ　あなたの道を私に教えてください。
　　　    私はあなたの真理のうちを歩みます。

私たちもダビデのように、真剣に神様に訴えていきたい。「助けてください。救ってください」と祈り求めていきたい。そうする中で、神様のすばらしさを知らされ、その偉大さに感動しながら、神様を賛美する者になっていきたいと思います。

12節、わが神　主よ　私は心を尽くしてあなたに感謝し           とこしえまでも　あなたの御名をあがめます。

「ねがわくは御名をあがめさせたまえ。」、「御名が聖なるものとされますように。」と主の祈りを祈る時、私たちは、「神様、あなたのすばらしさをもっともっと知らせてください。あなたご自身の豊かさ、偉大さ、聖さをもっと深く知り、もっとあなたに信頼し、あなたに祈り、あなたの御声を慕い求め、もっとあなたに近付くことが出来ますように。」そのような願い・思いをもって、この祈りをささげていきましょう。

さらに名前には「固有名詞」という熟語もあるように、この存在だけ、この人だけという限定された意味があります。その名前から、ひとりのお方だけが特定されるのです。例えば、皆さんが「高橋宣広」という名前を聞かれたら、正面に立っている私だけが思い浮かぶはずです。同姓同名もいるかもしれませんし、「高橋」という名字の方は多くいますが、「宣広」と付く人は珍しいでしょう。

ある時、若いクリスチャンミュージシャン（女性）がNHKのラジオ番組にゲストとして呼ばれました。現在も日本各地の教会で賛美奉仕をされている方ですが、東北の被災地で慰問コンサートを多くしているということで注目され、全国放送の番組に呼ばれました。アナウンサーからの質問に答える形で、ご自身の生い立ちや、不登校で苦しかった頃のことを話し、「その時、出会った神様を私はほめたたえたい、感謝したいという思いで歌を作り、歌っているんです」と話されました。

するとすぐにNHKのアナウンサーが、こんな質問を投げかけました。「神様っていうと何か特定の存在を思い浮かべますけど、それだけじゃなくて、すべてもの、すべての出来事に感謝っていうことですよね？」　公共放送のアナウンサーですから、できるだけ宗教色を薄めようとしたのかもしれません。それに対して彼女は、しばらく沈黙した後、こう答えたのです。「いいえ、私のことを愛してくれている神様に対する感謝の思いからです。」明確なその答えに、ラジオを聴いていた私は本当に感動しました。

世の中の人たちもNHKアナウンサーと同じように、私たちクリスチャンにこうささやきかけて来るかもしれません。「キリスト教の神様だけじゃなくて良いんだよね。何を信じていようとも、その信仰心が大事だよね。」

そんな言葉に対して、私たちははっきりと、きっぱりと「御名をあがめさせたまえ・御名が聖なるものとされますように」と祈り、告白していきたいのです。父なる神様、あなただけが私の神、私の主です。あなたのお名前だけがほめたたえられ、賛美されますように。ただあなただけが礼拝され、あがめられ、栄光が表されますようにと祈っていくのです。

詩篇86篇

8節　主よ　神々のうちであなたに並ぶ者はなく　　  あなたのみわざに比べられるものはありません。

10節　まことに　あなたは大いなる方　　　奇しいみわざを行われる方。　　　あなただけが神です。

最後に「御名が聖なるとされますように。」という祈りは、私たち自身が聖なる者に造り変えられていくことを願い、そして、私たちの心から始まって世界全体がまことの神様をほめたたえますようと、祈りが広がっていくことを確認します。

神の「御名が聖なるものへ」と祈ることは、神様のお名前が汚れているので、私たちでがんばって盛り立てて、私たちが、がんばってごしごし磨いて聖くするということでは、決してありません。まるっきり逆です。ダビデが正直に告白しているように力強い神の前にあっては、私たち自身は本当に弱く、神の助けが必要不可欠な存在です。

86篇1節　主よ　耳を傾けて　私に答えてください。私は苦しみ　貧しいのです。　

このように自分のどうしようもなさ、罪深さ、弱さ、自分の汚れを知って、聖なる神様の前に進みゆくのです。

自分は、聖なる神様をほめたたえるにふさわくないことを自覚し、そんな私を赦し、立たせてくださる聖なるお方を知り、このお方をほめたたえることができますようにと祈るのです。

リラというグループが「私たちのこの口は」（作詞／作曲 若林栄子）という賛美を歌っています。こんな歌詞です。

わたしたちのこの口は　汚れているけど
どうか主がこれを清めて　賛美を授けてください
偉大なあなたの御名が　天でも地でも崇められ

主の栄光だけが光り輝くように

あなたのその御名は　いつまでも讃えられましょう

わたしも主を慕いながら　心捧げて讃えます

“私だけ”がほめたたえられ、正当に（高く）“私だけ”が評価されることを要求し、自己を満足させていく、そんな願い・そんな生き方は、もう終わらせましょう。聖なるあなただけがほめたたえられますようにと求めていきましょう。

この世のもの：高く評価されている人やモノや、魅力的に思えてしまうあれやこれをではなく、神様ただあなただけに集中し、あなただけをほめたたえることができますようにと祈りましょう。

そして主の祈りは、“私だけ”の祈りではなく、私たちの祈りです。私の心・口・歩みが、主を喜び、主に感謝し、神様に栄光をお帰しし、神様の御名だけをほめたたえていくものとなりますように。さらに私だけでなく、 ＜　私の家族も、　＜　神の家族である福井中央キリスト教会が、＜　この地域・福井市が　＜　福井県が　＜　北陸が　＜　日本が　＜　東アジアが　＜　アジア全体が　＜　そして全世界が、まことの神様と出会い、このお方の偉大さに圧倒され、父なる神と信頼し、主なる神様だけをほめたたえる。そんな日が来ますように。そんな願いを抱きながら、主の祈りの最初の願い「御名が聖なるものとされますように。」を祈っていきたいと思います。

詩篇86篇9節
主よ　あなたが造られたすべての国々は
あなたの御前に来て　伏し拝み

あなたの御名をあがめます。

祈りましょう。